情報誌

5 月号/ 2011

インタビュー「ダメじゃん小出さん」

11.05.03

ダメじゃん小出さん

ピン芸人

ダメじゃん小出 氏


DAMEJAN KOIDE

プロフィール

1989年道化師養成学校を卒業後、ジャグラーとして国内外でストリートパフォーマンスを行う。その後、テーマパーク・ショッピングセンターなどのイベントから落語会の色ものまで幅広い分野に出演。近年は国内の大道芸フェスティバルの特別企画の構成・演出なども手がける。

2001年から東京を中心に時事ネタピン芸人として活動を始める。

TBSラジオ『永六輔・土曜ワイドラジオTOKYO』その他、新聞雑誌などのメディアでも
数多く取り上げられ、スタンダップコメディーの新鋭として、幅広い年齢層のお客さまに支持され多方面で活躍中。

◆ダメじゃん小出さんのHPはコチラ◆


(イベント情報)

「ダメじゃん小出の黒く塗れ! vol.14」

日時:5月26日(木)19時

会場:横浜にぎわい座 のげシャーレ

お問い合わせ:横浜にぎわい座 045-231-2525

ダメじゃん小出の黒く塗れ! vol.14






「ダメじゃん小出 ワンマンライブ in  杉田劇場」

日時:6月18日(土)15時

会場:杉田劇場(磯子区民文化センター)コスモス(リハーサル室)

お問い合わせ:芸人三昧 050-2200-6314

ダメじゃん小出 ワンマンライブ in  杉田劇場




「トヨタに就職すんのか?」


小出さんが今の道に進まれたきっかけは?

高校卒業後、エンジニアの仕事をしていたんですが、1989年にアメリカのリングリングサーカスの東京公演を見に行ったんですね。リングリングサーカスは、アメリカでも一番大きいサーカスなんです。普通、サーカスは1つのステージでやるのを、3つのステージで違う出し物を同時進行でやるっていう、質より量、スケールの大きいサーカスなんです。そこで、クラウンが…道化師のことをクラウンっていうんですが、ちなみにピエロは、そのクラウンのグループの中のひとつなんですけど。日本では「ピエロ」っていう印象が非常に強いですね。アメリカのクラウンっていうのは、物悲しい感じではなくて、すごく陽気なんです。それを見て「クラウンになりたい」と思ったんです。それで、ちょうどその頃「クラウンカレッジ・ジャパン」と言いまして、アメリカのフロリダにあるリングリングサーカスの学校の分校が日本にできることを知って、会社を辞めて即、入学したんです。
その時のご両親やご友人の反応は?
「クラウンになる」って言ったら、親は「トヨタに就職すんのか?」「クラウンって何だ?」という反応でしたね。そして「何?ピエロ?!この親不孝者め!」って言われました。
小さい頃から、人を笑わせるような素質があったのでしょうか?
そんなでもないですけど、秘めていたんでしょうね。小さい頃は目立たない子だったようです。
では、授業では手をあげないような子?
そうですね。集合写真もそっぽを向いたり、みんなと同じ事をやるのが好きではないタイプでした。クラウンと出会わなければ今の自分はない…人生の転換点でしたね。
その時に見た公演は覚えていらっしゃいますか?
楽しいんですよ。クラウンが握手しながら客席を回って、ズッコケてみたり、ちょっとした寸劇をやったり。笑い過ぎて涙が出るというよりも、ものすごく感動しちゃったんです。その時の感動をうまく表現できたらいいんですが、何だったんだろう…。
エンジニアを辞めて、その道に進まれたということは、クラウンになりたいという強い意志があったんですね。
何も躊躇もなく、これがやりたいと思ったんです。迷いはなかったですね。
今、小出さんがご活躍されている姿をご覧になって、ご両親やご友人の反応はいかがですか?
うちの両親は、時々友達と横浜にぎわい座の公演を観に来ています。ネタの中身より、お客さんの反応が気になっているようで…。
クラウンカレッジでは、どのようなことを学ばれたんですか?
養成学校にしては、期間が9から12月の4ヶ月間と短いんですよ。朝から晩までクラウンについて学ぶんですが、カリキュラムの中に、クラウンのメイクアップがありますね。自分にあった顔を見つけるまでやっていくっていう。それから、クラウニングといいまして、スラップスティックコメディという、ドタバタでコントの稽古ですね。他には、パントマイム、ジャグリング…そういう感じです。それから即興劇といって、グループに分かれ、打ち合せなしに与えられた状況設定で物語りを創ったり、カラダをつかった表現をやったり…朝から晩までずっとやるんですね。
先生にはどのような方が?
アメリカのクラウンカレッジから来ている講師で、6~7人いましたね。
では、授業によっては英語で?
通訳の人がついているんで…
学校の生徒さんは、全員素人の方ですか?
私のような素人もいますし、芝居をやっていた人もいるし、色んなところから来ているんですよね。
女性はいるんですか?
半々ぐらいでしょうね。1期で27人だったかな。半分は女性だったような。
4ヶ月間トレーニングをした後に、発表会のようなものはあるんですか?
最後に、卒業公演がありました。卒業公演では、基礎で習ったことをベースに作ったネタをやり、あとは仕事の現場で覚えていくという感じですね。自分の衣装とメイクアップは、それが自分の商品なので基本的にはいじれないんです。
初めてクラウンとしてご出演されたのは、いつぐらいですか?
正式な仕事というのは、90年の大阪の花博が初めての仕事でしたが、在学中にジャグリングが面白くなって、こっそり山下公園に行って芸を披露していました。
ジャグリングも毎日やらないと腕が落ちるものですか?
落ちますね。あの頃は、休みの日とか平気で6時間ぐらいやっていました。楽しくてしょうがないって感じですね。
どんどん難しい技にチャレンジしていくんですね。
そうですね。ボールの数を増やしていく…そして上達してくると、やはり人に「見せたい」と思うようになっていくんです。
もちろん、失敗もあるわけですよね?
失敗のほうが多いです!今でも失敗ばかりですけど…(笑)。クラウンをやる傍ら、ストリートパフォーマンス、大道芸をはじめたのが90年ですね。

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その人なりに楽しんでもられればいいなと思っているんです。


にぎわい座での公演では、ジャグリングはなくて「トークライブ」ですよね。本職はどっちなのですか?
人によく「いったいお前は、何屋なんだ?」と聞かれるんです。芸の引き出しはいっぱいあるんです。でも、奥行きがない!(笑)これが他の芸人さんとの違いですかね。もともとクラウンは、仕事でやっている意識はないんです。人を楽しませる手段のひとつとして、道化とかジャグリングとかがあって、ピン芸人としての自分もいるんです。でも今は、舞台でやっているほうが多いです。よく同業者から「屋根のないところじゃできない大道芸人」と言われています。
舞台に立たれているときは、どんなお気持ちですか?
楽しいです。とにかく自分の表現スタイルで笑ってもらいたいというか。
小出さんのトークライブは、時事ネタが多いですね。旬なネタをリアルタイムでやればやるほどウケがいいと思うのですが、場合によってはタイミングがずれてしまうこともあると思うんですが…。
急にニュースなどの鮮度が落ちてしまったり…ということですよね?それはありますね。でも、そのへんもだいぶ慣れてきました。以前はネタ作りが苦痛だったんですが、今は楽しみです。自分がステージに出ている1時間半~45分の中で、自分で演出したものをスタッフのみなさんに支えられて、ステージで披露できるというのは幸せなことです。創作過程は大変ですけど、でも、出ちゃえばどうにかなるさで…。
新聞やテレビニュースはたくさんチェックしているのでしょうか?
良く言われます。「何紙もの新聞を隅から隅まで読んでいるんじゃないですか?」って。実はそんなことなくて、新聞は読みますが1紙。あとはNHKニュースですかね。ネタを拾おうと思って見ていないんで…。
ニュースをよく見ていないと、話の内容がわからなくて、自分が置き去りにされたような気分になってしまうのですが…
よく、お客さんのアンケートなどで「今度は、ニュースをちゃんと見てきます」と、書かれているんですけど、その人なりに楽しんでもらえればいいなと思っているんです。時事ネタというと、ひいてしまう人もいるんですけど、そんなには意識もしてないので…。自分としては、ニュースの内容がよくわからない人から、よく知っている人まで色んな人がいる中で、そのお客さんをライブの最後まで、どう持っていくかという駆け引きの面白さというのもありますね。確かに、半分くらいは時事ネタですけど、最近は自分が日常であったことをそのまま話すこともあります。
「時事ネタ」=「小出さん」というイメージなのですが…
そうですね。ま、でも、そういうことを主体にやっている芸人さんだなと思ってもらえるほうがいいんですけどね。『大道芸人が舞台でライブもやっている!』そういうイメージを持っている人もいるんで、そこをうまく”普通の芸人”というかたちで、舞台の芸人にもってくかという課題もあるんです。そのへんはもう、どんどん広めていくしかないんで、地味な作業ですけどね。

「そのまま、ガンガンやってけ!」


小出さんが尊敬するクラウン、または、芸人さんは?
「この方です!」というわけではなく、好きな芸人さんは沢山いますよ。大道芸からライブのステージに立つきっかけをつくってくれたのは、落語家の立川生志師匠です。野毛大道芸で僕の芸を見てくれたんです。それは、芸が終わって投げ銭をお客さんからいただく時で、投げ銭入れの帽子を子どもに持たせ、はがいじめにして拳銃を突きつけて、見ているお客さんに「お金を出せ」(笑)と。それを見た生志師匠が「僕の会で出ない?」って声をかけていただき、そこからつながって、立川志の輔師匠の会に出させていただいて、人に言葉をどう伝えるかなど、色んな部分で勉強になりました。
落語もご覧になりますか?
興味がなかったんですけど、色々関わっていくうちに、だんだん聞くようになりましたね。落語は面白い!!
この仕事をやっていて良かったと思うときは、どんな時ですか?
横浜にぎわい座でのソロライブ「黒く塗れ」の1~4回目の時は、常連さんが多かったんですが、回を重ねていくうちに、芸能ホールでチラシを見た方が来てくれて、リピーターになってくれて、久しぶりに来られたお客さんから「客層、変わった?」と言われたり、終演後に、知らない年配の男性に「そのまま、ガンガンやってけ!」とひと言、ありがたい励ましのお言葉をいただいたりと、そういう時に「やってて良かった」って思うんです。
舞台に出ていらっしゃる時、お客さんの表情は見えるんですか?
はっきりではありませんが、見えていますよ。
舞台に出てからその時の状況を見て、ネタを変えることがあるのでしょうか?
舞台に出てから変えることはありますね。何気なくお客さんの反応を見ながら、リサーチはしてます。ネタの骨格はいじりませんけど、合い間で「これはちょっと反応がこないから、じゃあ、これ」と、差し替え、差し替えで、頭の中がぐるぐる回っています。瞬時の判断ですが、ライブをやっていく上では、すごく大切なことなんです。
小出さんご自身は、どんな笑いが好きなんですか?
シュールな笑いですね。『それ、笑っていいのか?シャレになんないよ』って感じのものが好きですね。他の芸人さんの芸を見たり聞いたりもしますけど、ついつい『次はどうくるのかな?』とか、構成などを考えてしまうんです。『楽しもう、楽しもう』と思っても、気がつくとそうなっていますね。

それはもう、ありがたい話というか…


にぎわい座の公演の中で、今までで一番印象的なものは?
今年1月の「新春18きっぷ」(鉄道ネタ)かな。いつもは、1公演のにぎわい座の公演を、昼・夜の2回やったんです。2回公演ということで、100人来てたお客さんが、50人・50人になってしまうかも知れないしという不安があって(笑)、そのへんでどうしようって悩みましたね。
地元紙、神奈川新聞さんに宣伝にも行きました…神奈川新聞さん、鉄道好きがいっぱいいらっしゃいました(笑)。蓋を開けてみたら、昼も夜も満員御礼。まったく鉄道を知らない人でも「面白かった、鉄道に乗った気分になった」って、喜んでいただきました。
いつから鉄道ファンに?
大好きってわけではないんですけど、ま、子どもの頃から京浜急行とJRが近くを走るとこに家があったので、好きになっちゃったんですよね。
電車に「乗る」のが好きなんですか?
電車全般が好きですけど、やっぱり「乗りテツ」ですね。地方に仕事で行った帰りは、乗れる限り夜行列車で帰ってきますね。

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近々、どこかの電車に乗りに行く予定はありますか?
2月27日に京王線の6000系が引退するんですが、そのイベントがあるから行かない?と知人に誘われたんで、行ってみようかなと。
引退するときは、何か儀式があるんですか?
特に何もないですよ。去年の6月に、京急の一番古いのが引退したときに行ったんですけど、「ああ、終わっちゃったな」という感じで。それからその電車が、地方の線路で走っているという情報を聞いて、そこに会いに行ったりとか。
「見に行く」というよりも「会いに行く」ですね。
そうです。あっ、いた!って。楽しいですよ。仕事で九州に行ったときの帰りも、四国は高松に京急が走っているんで、高松に寄り道して帰って来たり…。「お金がもったいないじゃん」って、人に言われるんですが。お金には変えられないんです。
最終目的として「運転してみたい」というのがあるんですか?
いいえ、ないですね。ネタで運転資格をとりに行こうと考えたことはありましたけどね。
運転手の資格ですか?
あるんですよ。「鉄道文化村」っていうんですが、そこで、電気機関車の資格をとるっていうので。けっこう高いんですけどね。ま、鉄道のライブは色んな可能性がありそうなんで、これからもやっていきたいと思っています。
「新春18切符」も、もとをたどれば、にぎわい座のスタッフの方に「鉄道好きでしょ?」って言われたんで「好きですよ」って言って、にぎわい座の10回目のときに「じゃあ、鉄道ネタでやってみたら?」って、そういうノリだったんです。それはもう、ありがたい話です。最初は「さようなら寝台特急、富士はやぶさ号!」というテーマで、その乗車体験記を物語風にやったり…。
鉄道が好きな方って、鉄道の話をしているときって、ものすごくいきいきしてますよね。
それ、よく言われます。
京急線の駅で、一番好きな駅を教えてください。
「この駅!」というよりも、都心から三浦半島への京急沿線ですね。住宅地、工場、公営ギャンブルがいっぱい。JRとの川崎―横浜間のデットヒート、そして海と山の半島へ…快速で1時間弱の距離に色んなものが残っています。

基本的にひとりが好きなんですね。


コスチュームを変えて、コントをやっていらっしゃいますが…。
コスチュームは、コントを伝わりやすくするための道具です。ワンポイントで衣装を変えて、お客さんがすぐに「おじいさんだな」とか、そんなふうにわかるようにしたいと思っているんです。極力、衣装を使わないで伝えられるように頑張ってるんですけど…。

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ひとりじゃなくて、複数でやろうと思われたことはありませんか?
ないですね。企画ものを数人のキャストでやったことはありますけど、基本的にひとりで創っていくのが好きなんですね。行き詰まったりすることが、しょっちゅうですが…。
ひとりのほうが楽ですか?
あんまり意識してないんですけど。
では、これからもおひとりでいかれる感じですね。
そうですね。これからもっとライブを増やしていきたいなと思っています。回を増やして、ネタも増やしていかなくてはならないので。その土地、その土地の話題を入れながらという感じです。

自分の空間で日常を忘れて欲しい


小出さんにとって「笑い」とは?
うーん難しい質問ですね。笑われていたい自分がいるんですよね。
いつも笑われていたいと?
笑って日常を忘れてもらいたいというか、お客さんに自分の笑いの空間で、それぞれの日常を忘れて欲しいというのがありますね。元々、自分はストリートからはじまった芸人。屋根も何もないところで、ショーの空間を作って、お客さんとの一体感をつくる。そこで「なんか、わかんなかったっけど、最後まで見ちゃったよね」って。足を止めて日常を忘れて、お客さんに笑ってもらうっていうのが、自分の喜びですね。
これから挑戦したいことはありますか?
日常のものを使って、ばかばかしいものをつくれたらと思っています。いつもそういうことを考えているんですけどね。東急ハンズを回ってウロウロしたりして。
買おうとは思っていない?
使えそうなものがあったら買います。何か面白い使い方はないかと考えてますけどね。あとは、人形劇が面白そうだなぁと。
何系の人形劇を?
その時その時の話題や、ニュースを昔話や動物になぞらえて、大人が楽しめる人形劇のようなものを、ちょっと前からやってみたいなと。今、ストリートでやるネタは、お客さんが参加して、お客さんに芝居をするネタをやっているんですけど…
お客さんが参加するんですか?仕込みはまったくなしですか?
仕込みなしです。何人かのお客さんに、役柄・ストーリーを説明して、お芝居をしてもらう。
見ているほうもびっくりですね。横浜で気に入っている場所はありますか?
野毛の街ですね。野毛の飲み屋街…なんだろうあそこは…酒が旨い。
公演が終わったあとは、必ず立寄られますか?
だいたい、あの辺で飲んでますね。あとは、知り合いと「どこに行こうか?」っていうときに「野毛にしよっか」って話になりますね。ただいつも思うのは、帰りが遅くなると、上り(電車)がないんですよね。下りの根岸線はいっぱいくるのに、何で上りがないんだよって。終電をあと30分遅らせて(笑)。
(2月18日 横浜市芸術文化振興財団 会議室にて)