情報誌

6 月号/ 2012

インタビュー「佐藤まいみ さん」

12.06.01

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photo:shingo fujimoto

Dance Dance Dance @YOKOHAMA2012ディレクター

佐藤まいみ氏

MAIMI SATO

プロフィール

「ヨコハマ・アート・ウェーブ’89」アーティスティック・ディレクター、神奈川芸術文化財団プロデューサー、「フランスダンス’03」フェスティバル代表プロデューサーを経て、現在、埼玉県芸術文化振興財団プロデューサーを務める。横浜市在住。

 


(イベント情報)

Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2012

■日時:7月20日(金)から10月6日(土)

■会場:みなとみらい、関内及び山下公園周辺ほか 市内各地

◆詳細・お問い合わせ:

横浜アーツフェスティバル実行委員会

045-663-1365

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横浜の街全体を舞台に、ダンスの祭典を繰り広げます

最初のダンス体験は盆踊りとお神楽

ダンスのディレクターやプロデューサーとして長くご活躍です。ダンスに出会われた最初のきっかけは何ですか?
東北(岩手)の田舎で生まれ育った私にとって、小さい頃とても楽しみにしていたのは、盆踊りと神楽。年に一度、夏の宵にいろんな世代の村人たちが集まって笛と太鼓に合わせて円陣で踊る盆踊りは、子ども心に浮き浮きするものでした。これが私の最初のダンス体験です。神楽も、太鼓と笛の音に合わせて仮面と装束の大人たちが宵の口から真夜中まで延々と踊るのをドキドキしながら眺めていました。小学校に入ったあたりの時は子ども向け雑誌で見たバレエに憧れていましたね。
 
本格的に、ダンス関わるようになったのはいつですか?
田舎なので近くにバレエスタジオなどありませんでしたから、本格的にダンスを学ぶなどということはできなかったです。バレエより勉強をしてほしいと望んでいる親でしたし。大学に通うようになって都市に出た時、すぐに研究所を探してバレエとモダンダンスを学び始めました。大学では数学を専攻していたのですが。1年目のある夏の夜、部屋で一人、そのとき習っていた実数論について復習していたときですが、ラジオの深夜放送から流れてきたあるポップ音楽を聴いて突如、数学をやめてダンスにしようと決めました。18歳の女の子の想像力は飛躍するんですね。後のことは考えなかった。で、ダンスが学べる大学を探して3年生に編入しました。
 
ダンスのプロデューサーとなられたのはどのような経緯ですか?
70年代末、将来のことで悩んでいたときにふと思い立ってパリに行きました。そこで日本では見る機会がないようなダンス公演も見られたので住んでしまうことに決めました。そのころ73歳だった舞踏の大野一雄さんが初めての海外公演でナンシーフェスティバルに招聘されて、それがフランスで大きな話題になっていました。公演のおり通訳などのお手伝いを頼まれたりしたのですが、そのときにパリで大野一雄さんのフランス公演をプロデュースしていたフランス人女性に会い、それが職業として成立しているということに刺激を受けました。日本ではダンサーが自腹を切って公演していた時代ですから。彼女のすすめもあって、友人、知人の日本人舞踏ダンサーたちのパリ公演やヨーロッパのフェスティバルでの公演を組織するようになっていって。80年代のパリは日本の舞踏に関心のあるところでしたね。そのうちに踊りに対する自分の考え方も変わっていって自分ではもう踊らなくてもいいのかなと。場所が変わったりいろいろありましたが、考えてみるとそれからもずーっとダンスの世界にいます。
 
ずっとダンスから離れられなかったその魅力について教えてください。
何でしょうね。本能みたいなものだと思います。自分が生き続けていくうえで欠かせないものであったことは確かです。いいものであれば音楽もジャンル問わず好きですが、踊りもそうです。リズムや動きは生物の原初の本能や宇宙の法則のなにかと結びついているところがあるんじゃないですかね。いろんな意味で。。
 
今の時代にダンスが果たす役割はどんなものですか?
この4月から中学校の学習指導要領が改訂されて、ダンスや武道が必修になりました。ダンスにはいろんな要素が詰まっていますが、人と人との繋がりを作ったり深めたり広げたりする役割も果たすことができるものだと思っています。これまで学校では科学的な思考や論理が偏重されていたと思うのですが(音楽、美術の授業は例外として)、成長過程で言葉を超えた身体感覚や心の動き(感情)を扱えるダンスに向かいあうのは大事だと思います。ダンスというのは、リズムに乗って楽しく踊るという面はありますが、それだけでは心もとない。他者とどう向かい合うか、自分のからだを意識することによって、相手のからだや思いも想像できる能力のようなものも養えるのではと感じています。ダンスは言葉を超えたコミュニケーションとも言えますから。ネット時代だからこそ生身で表現するダンスを見直していただきたいです。
 
からだを意識することは大切ですか?
リラックスしつつ意識を集中するといった能力を身につけるためには欠かせないように思います。テンパって周りが見えなくなるとろくなこと起きないような気がするし…。いろんなダンスがありますので一口にはいえませんけど。

横浜は空が見える街

横浜で活躍されるようになったのはいつからですか?
1989年に開かれた横浜開港130周年国際舞台フェスティバルでの「ヨコハマ・アート・ウェーブ’89」のアーティスティック・ディレクターの仕事からですね。その頃は帰国して間もなく、帰国子女みたいな孤立した気分のときだったので仕事以外の時は一人の時が多く、時間があればよく空を眺めていました。横浜は空が見えるのがよかったですね。東京は高いビルに阻まれて空が見えないけれども、横浜は海のほうに向かうとぱーっと視界が開けて開放感があって。
 
以来、横浜との関わりは深いのですね。今、ディレクターとして捉える横浜の魅力とは何ですか?
新しいエリアと古いエリアがあってどちらも魅力があるところですね。私自身のお気に入りの散歩コースは、汽車道から、赤レンガ、象の鼻を巡り、古くから親しまれている山下公園とフランス山、港の見える丘公園、外人墓地、山手を歩くという典型的な観光コースですが。新旧が合い混ざった横浜にしかない魅力があります。

横浜を舞台にダンスの祭典開催

その横浜を舞台にダンス・フェスティバルが開催されますね。
Dance Dance Dance @ YOKOHAMA2012は、横浜の街全体を舞台に、ダンスの多様性を体感していただくフェスティバルです。クラシックバレエ、現代ダンス、ストリートダンス、フラダンス、盆踊り…さまざまな時代とスタイルのダンスが繰り広げられます。オープニングを飾る「横浜ベイサイドバレエ」は横浜港の海を背景にしての、日本では珍しい野外バレエ公演。バレエには縁がないと思っていた方でも海風に吹かれながらのバレエは楽しんでいただけると思います。また、バレエのようにプロのダンスを鑑賞する公演から、盆踊りやフラダンスや社交ダンスなど自ら参加して踊るものまで、楽しみ方も様々です。ダンスが持っている数えきれない魅力に巡り会っていただきたいと願っています。

 

2012年4月10日 横浜市芸術文化振興財団事務局にて