カラダが語りだす、世界の隠された物語
今回、横浜美術館で開催するのは、人間の身体や集団としての行動、超自然的な存在など、
歴史を通じて作り上げられた身体が生み出すイメージの数々をモチーフに、それぞれの角度から作品化していく、国内外6人の現代作家たちによるグループ展です。
時に私たちは、ある身体に対して 「健康/不健康」とか、「美しい/醜い」 といった感覚を抱いたり、「特定の行動の中に典型的な日本人」といった形容で何かの集団を代表するイメージを思い描くことがあります。
あるいは、ほんの少しその印象が食い違うだけで、とても奇妙な感覚を覚え、全く異なる意味を感じ取ってしまうこともあるでしょう。
しかし、さまざまな違いのある人々が同居する世界では、個々の身体が持つ色や形状、振る舞いなど、本来特定の意味などなかったはずのものにも価値の差別化が生じ、不幸な歴史へと繋がったことも少なくありません。
本展出品の6作家の作品には、詩的に、時にユーモア溢れる表現で、身体を通じて立ち現れる歴史と向き合い、未来へ向けて新たな意味を見出していこうとする姿が見えてくることでしょう。
イギリスで生まれ、ナイジェリアで育ったインカ・ショニバレMBEは、アフリカ風のろうけつ染めによる生地を用いて、大航海時代以来続くアフリカとヨーロッパの関係に言及する作品を制作します。
マレーシアの女性作家イー・イランは、東南アジアの民間伝承で知られる女性の幽霊、
ポンティアナック(マレーシアでの名称)をモチーフにした映像インスタレーションを出品。
映画監督としても知られ、今年、日本で熱い注目を集めるタイのアピチャッポン・ウィーラセタクン。本展では、日本初公開のビデオ・インスタレーションを披露します。
ベトナムを拠点に活躍するウダム・チャン・グエンは、ベトナムの道路の主役ともいえるオートバイが、まるで身体中を駆け巡る血液のように縦横無尽に走り回る映像インスタレーションを発表します。
そして日本からは、2015年に衝撃的なデビューを飾り、今、もっとも注目される写真家の一人、石川竜一と、新進気鋭の現代美術家、田村友一郎の2名が、このグループ展に出品します。
また本展は、毎年2月に開催される「横浜ダンスコレクション」とも連携し、
美術とダンスの両面から身体が生み出す表現を掘り下げます。